農村文化情報

分類:果樹経営 都道府県:熊本県 団体名:JAあしきた管内
グループ名:有限会社 鶴田有機農園

ほんもののミカンを届けたい
 
有機農園を支える技

柑橘の栽培を始めて約1世紀。現在は各品種の有機減農薬栽培に取り組む。消費者に向き合ってきた農園の経営には、さまざまな工夫もたわわに実っていた。

●事業の活動内容
 

鶴田ほとりさん(55)が、平成6年に法人化し、社長を務める「有限会社・鶴田有機農園」(役員2名、社員6名、パート6名)は、10.3ヘクタールの柑橘園で、有機減農薬栽培に取り組んでいる。それとともに生活協同組合や量販店、個人向けなどに出荷している。
鶴田有機農園の特徴のひとつに柑橘類の種類の多彩さがあげられる。9月のレモンに始まり、翌年5月の甘夏まで切れ目なく出荷が続く。これは収穫期をずらしたことによって労力の平均化をはかるとともに、長期にわたる雇用労力の確保がねらいである。


●事業の開始時期、実施の理由・目的

鶴田有機農園の歩みは、まさにパイオニアの歴史といってもよい。平成13年に他界した義父・源志(もとし)さんは、農業に就いて間もない昭和8年に有機栽培を取り入れ、47年ごろから本格的に始めた。そのほか昭和24年に『川野夏橙』を植え付け、改良して「甘夏」と名づけて普及させた功労者だ。
農園で栽培する柑橘の種類も多い。昭和57年ごろまでは「甘夏」一本だったが、オレンジの輸入自由化に対応するとともに、年間人を雇えるような態勢をつくるために多種類・多品種に切り替えた。


●事業の特色

「鶴田有機農園のここに技あり!」
●作る
<モグラ堆肥>
原料に動物性有機質(魚粉、骨粉、カニ殻)、植物性有機質(米糠、ダイズ粕、ナタネ粕、ゴマ粕、海草粕、発酵ピートモス)、鉱物など(リン酸グアノ、粘土鉱物、核酸エキス、発酵菌群ほか)を完熟発酵させた堆肥兼肥料で、いろいろな種類の作物に使用できる。ここで特徴的なのは、牛糞、豚糞、鶏糞などをいっさい使っていないことである。これが、鶴田有機農園の“おいしいミカン”を作り出す源となっている。春、夏、秋の3回手まきし、1年に20キロ入り約300袋を使う。
<雑草対策>
除草剤を使わず、草刈機で刈る。雑草は土の状態を示す指標になっている。たとえば、ワラビが生えてくれば、まだ土地がやせており、ハコベのじゅうたんになれば良好な土になった証拠。雑草も敷き草として活用し、「草も財産」が鶴田さんの信条である。
<病害虫対策> カミキリムシや病気の発生源になる枯れ枝を、こまめに手で取る。完全無農薬は難しいため、梅雨期前に黒点病の予防薬を、ダニ、カメムシなどの異常発生に対応して防除薬を散布している。長年の土づくりのおかげで、病害虫に強くなった。

●備える
<試験圃>
つねに将来に備えて新しい品種を模索している。試験場や苗木業者などと情報交換し、農地の一画で、数種類の試験栽培をしている。それらの結果、土地や農法への適合性や消費者の反応などを見極めながら品種を絞ったり、ときには大胆な入替えをしたりしている。
<幼木栽培>
野菜畑を幼木園に活用している。すべての品種の幼木を随時育てておき、枯れたらすぐに補植できる態勢を整えている。「農業に病害虫はつきもの。木は枯れるもの」という判断の潔さと周到な備えをしている。

●売る
<ネーミング>
『セミノール』には「紅小夏」、『津の香』には「桜小夏」という独特の商品名をつけてアピールしている。
<詰め合わせセット>
多品種栽培の利点を生かし、5キロ詰め2200円ほどで販売している。詰め合わせの中身は、その時期の収穫状況と顧客の要望に応じて変わる。1個1個手詰めにし、個人向けの箱には手紙「みかん山だより」も添えている。内容は有機農法の紹介から季節の話題、健康や教育問題までさまざま。それらの効果もあって、個人向けの宅配は販売量全体の20%を占めるまでになった。とりたてて宣伝はしないが口コミで鶴田有機農園の評判は、関東地方をはじめとして全国に広がっている。

●生かす
<加工品>
外見が悪くて商品にならない柑橘類は、近隣の工場に委託してジュースにする。保存料は使わず、搾ったままをじっくり煮沸殺菌し、果汁100%のストレートジュースにしている。500ミリリットル瓶が450円で、年間1000本ほどを出荷している。
<廃園をよみがえらせる>
生産者の高齢化などにより廃園になった農地を引き受け、新たな農道をつくり、堆肥を入れながら整備している。


●活動の成果、今後の事業展開計画
 鶴田有機農園は、ほとりさんで4代目。初代は明治33年(1900年)に、日本で始めてレモンとネーブルを導入した。現在でも全栽培面積の50%以上をレモンが占めている。
有機栽培への取り組みも早い。源志さんが農業に就いて間もないころから部分的ながら有機栽培を取り入れ始めた。その後、源志さんとほとりさんの夫・志郎さん(64)は、甘夏の味がまずくなり、畑の土が硬くなってきたことに気づき、その原因を探求した。その結果、気鋭の土壌研究者に教えを受け、鶴田さんの農園では化学肥料と除草剤の使用はいっさいやめた。
それ以来、鶴田有機農園の栽培を支えているのは、「モグラ堆肥」である。源志さんと志郎さんが立ち上げた「マルタ有機農業生産組合」で開発・製造した有機発酵肥料である。材料調達の利便さを考え、製造・販売の拠点を静岡県御前崎市浜岡町にある「東海マルタ堆肥センター」に置いている。
モグラ堆肥は、各種原料を混ぜて水分を補給しつつ、40〜60日かけて微生物の力で有機物を発酵、分解、熟成させていく。作物の根と微生物は、たがいに栄養を与え合いながら共生している。この状態を良好に保つのが有機発酵肥料の力である。
こうした経営を基盤に、社長の鶴田ほとりさんが現在考えていることは、農業に意欲のある都会の人たちの活用である。田浦地区周辺の農家でも経営主の高齢化と後継者がめだつという。その手だての一環として研修生の受け入れを始めており、すでに3名ほどが農園でミカン作りの研修をしている。


《問合せ先》
鶴田有機農園
〒869−5302
熊本県葦北郡田浦町田浦
TEL 0966-87-0061
 

●地域の概況

芦北町田浦地区は、熊本県の南西部に位置し、町域内には九州山地の南西端にあたる山々が連なり、山腹の斜面が直接海に迫っている。全町面積の64%余りが林野によって占められている。基幹産業は農業で、甘夏、デコポンなどの柑橘類の栽培が盛んである。



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