農村文化情報

分類:農業経営 都道府県:富山県 団体名:JAうおづ管内
グループ名:宮坂貞子さん

ピンチはチャンス!宮坂さんちの農業経営
 
経営の三つの転機

和牛の肥育→大規模稲作→直売所開設、加工と経営内容をさまざまに変化させ、収入の安定をはかってきた宮坂貞子さんは、どういう転機を乗り切り、未知の分野にチャレンジしてきたのだろうか。

●事業の活動内容
 

平成6年に農業簿記を習ったのをきっかけに、宮坂貞子さんは自分の家の経営を分析し、将来進むべき道を見据えて取り組むようになった。 宮坂家の農業経営には、大きく見て三つの転機といえる出来事があった。すなわち
1.畜産(和牛)から大規模稲作への転換
2. 転作対策としての「魚津リンゴ」の直売と直売所の設置
3. 野菜の市場出荷をやめ、キュウリ、ナス、赤カブなどの漬け物加工を始めるとともに餅の加工なども手がけるようになった。
これらの転機をばねに、幅広い、変化に富んだ経営内容を実現させた。
これらの経営を支える手法の一つとして、宮坂家では「家族経営協定」を結んでいる。貞子さん、夫の勝夫さん、長男夫妻の4人が、それぞれ加工、リンゴ、稲作、販売などの部門を担当し、責任をもって仕事に取り組んでいる。あわせて、この家族協定の実効があがるように月給制、休日の確保など斬新な発想も取り入れている。

 

●事業の開始時期、実施の理由・目的

<宮坂家の農業経営の歩み

経営内容の変遷 実施の内容・ポイント
平成2年

○和牛の肥育から大規模稲作農家への転換

・「農業後継者育成資金」を借り入れ、コンバイン、乾燥機、籾すり機、トラクターを購入。(資金は毎年97万円ずつ返済。平成9年7月に完済)
水稲 5.5ha
(以後4年間変わらず)

・夫、長男が外へ出ている間、水田の管理に励み、土地の集積をめざす。努力が報われ、4年後、受託面積は13ha。

平成3年 ○減反政策でリンゴ25haを植栽(夫の勝夫さんが担当)

・水稲以外で収入を得る道を模索し始める。
・剪定講習会に出席するなど、栽培技術の修得に努める。

○水稲の育苗ハウスで市場出荷野菜の栽培を始める ・ホウレンソウ、カブを市場出荷
平成6年

○水稲の受託面積13haに

水稲 13ha(すべてうるち米)
リンゴ 25a(未収穫)

・米も「量から質で勝負」する時代に。それとともに低コストで安全なおいしい米作りをめざす。(健全な苗づくりから有機肥料を使った土壌改良、減農薬栽培までの学習に努める)
○複式簿記の記帳研修会に参加(貞子さん) ・青色申告を任される。複式簿記を学んだことにより、@わが家の資産、負債、資本 A土地を除く備品や建物などの原価償却額が把握できた。
平成8年 ○リンゴの栽培面積を拡大(勝夫さん) ・“矮化栽培”を導入し、26a植栽して面積を増やす。

○野菜の市場出荷をやめ、漬け物加工用の野菜作りにシフト

水稲 14ha(うるち米)
リンゴ 51a(未収穫)

・ナス、キュウリ、赤カブなどを栽培し、漬け物加工の準備を始める。
平成9年 ○農舎兼直売所の建設

・米は2/3をJAへ出荷、1/3を直売所で販売。
・リンゴは全量を直売。
・ダイコン、ナス、のビール漬け、キュウリのからし漬け、カブの酢漬けなどを販売

水稲 15ha(うるち米)
リンゴ 51a
加工用野菜(ナス、キュウリ、紅ダイコン、赤カブなど) 10a

・「スーパーL資金」(農業経営基盤強化賃金)を2000万円借り入れ
・米の保冷用に冷蔵庫(中古で5万円)を購入。
・漬け物製造のための「食品衛生責任者」の資格を取得。
・加工品のラベルをはるシール機(19万円)を購入。

平成10年

米の価格が下がり、加工部門を強化

水稲 うるち米 16ha
     もち米 4ha
リンゴ52a
加工用野菜 10a

・もち米4haを栽培し、餅の加工に備える。
・漬け物加工に熱心に取り組むにつれ、水稲、リンゴ、加工の各部分に労働力をどう配分するかが課題になった。そこで『家族経営協定』を結び次のような部門別の担当を決め、責任をもって取り組むことにした。

水稲(長男)
リンゴ(夫・勝夫さん)
加工・経営記帳(貞子さん)
販売(長男の嫁)
また、毎月、一定金額の給料を支払うこと、休日を確保することを申し合わせた。

平成12年

○加工施設を建てる

水稲 うるち米 13ha
     もち米 4ha
リンゴ 1ha
加工用野菜 10a

・中古のプレハブ施設(43.36u)を240万円で購入。
・リンゴは、仲間から40aを借り受けて約1haに拡大。

平成13年

○本格的に加工に取り組むため、餅の加工機具を購入。

水稲 うるち米 15ha
     もち米 4ha
リンゴ 1ha
加工用野菜 10a

・購入した加工機具(購入順)
@餅つき機(中古で16万円)
A回転釜(中古で5万円)
Bガス式蒸し器(42万円)
C餅のし機(80万円)
D自動のし餅角切りカッター(98万円)
(@〜Bは平成13年、CDは14年に購入)
加工施設の開業賃金は約500万円に抑えることができた。

平成14年

機具をそろえ、加工施設を整える

水稲 うるち米 16ha
     もち米 4ha
リンゴ 1ha
加工用野菜 10a

 
平成16年

○乾燥機を導入して「乾燥かき餅」の製造を始める。

水稲 うるち米 17ha
     もち米 2ha
リンゴ 1ha

    
・乾燥機を40万円で導入。餅加工の周年化を図るとともにリンゴ、野菜などの乾燥も検討している。

●事業の特色

宮坂貞子さんは、記帳している複式簿記のデータを基に、宮坂家の経営内容を冷静に分析してきた。その結果、経営を取り巻く農業や一般経済の状況を的確にとらえて対応し、ピンチを乗り切ってきた。経営内容も和牛の肥育に始まって、受託を中心とした大規模稲作、リンゴの矮小栽培、漬け物や餅の加工など多岐にわたっている。そのほか、いろいろな加工施設を導入するさいも、できるかぎり格安のものを探し求めてコストダウンを図るなど、随所に工夫がみられる。
加工部門は主として貞子さんが担当。平成5年から加工野菜の栽培を始め、漬け物加工の準備するとともに、9年からは直売所でダイコン、ナスのビール漬け、キュウリのからし漬け、カブの酢漬けなどを販売している。続いて12年には、加工施設(45.36u)を格安の240万円で購入し、基盤づくりに努めた。
漬け物加工に加えて、13年からは米の価格がより下がってくることを見越して餅の加工に力を入れることにした。約500万円の開業資金を準備し、もろもろの加工機具をそろえ、本格的稼動に備えた。


●活動の成果、今後の事業展開計画
 <稲作部門>
長男の博一さん(42)と妻の希宗子さん(42)が担当。初めは経営面積5.5haという状況が続いたが、管理作業の効率化などに努めた結果、受託面積を増やすことができた。現在では、19ha(うるち米17ha、もち米2ha)にまで拡大でき、大規模稲作の基盤づくりができた。

<リンゴ作部門>
夫の勝夫さん(67)が担当。平成3年に25aでスタートし、その後矮小栽培を導入するなど、積極的に省力化を図った結果、面積を51aに増やした。さらに9年には仲間から40aを借り受け、面積を1ha近くまで拡大するとともに、全量を直売している。

<加工部門>
貞子さんが担当。白餅、コンブ餅、黒豆餅、草餅の5種類を柱とする餅加工を行っている。年間の玄米量にして3000kg(30kg×100袋)ほどを加工している。
漬け物、生餅の加工に加え、貞子さんは新たな加工部門の拡充を図っている。その第一弾が「乾燥かき餅」の製造である。従来の生餅製造だと半年間だけの仕事で、夏場は休んでいた。その空白期間を埋めるために、新たに乾燥かき餅を計画している。そのため、40万円で乾燥機を導入。どのくらいの厚さにするか、どのくらいの湿度、時間で乾燥させるかなどをテストした結果、ほぼ商品化のメドがたったという。
餅のほか、導入した乾燥機を利用してのリンゴ(色の悪いリンゴを利用してのフルーツチップの製造)や野菜の乾燥についても検討している。
加工と合わせて貞子さんが熱心に取り組んでいるのは33名の仲間と一緒にやっている「直売クラブ・おいでやす」の活動である。このクラブは平成12年に結成されたが、6年目を迎え、年間の売り上げ4000万円ほどと上向いている。 扱っている商品は、自家野菜、野菜を使った20種類以上にのぼる漬け物、梅干し、リンゴなどのジャム、山菜類、餅などである。


《問合せ先》
宮坂貞子さん宅
〒937-0815 富山県魚津市大海寺新393
TEL 0765-24-8582(自宅)  
TEL 0765-24-8905(直売所)
 

●地域の概況

富山県の東部、富山湾に面し、黒部市と滑川市の間に挟まれている。市の南東部は標高2000mに達する山岳地帯が立山連峰に連なり、これらの山地を源として早月川、角川、片貝川、布施川などが湾曲しながら富山湾にそそぎ、布施川、早月川がそれぞれ黒部市、滑川市との境界線となっている。
海岸線の延長は約7.9km、屈曲には乏しいが、海岸は溺れ谷(陸上の谷が地盤沈下などにより海面下に沈んでできた湾)で水深も深く、昔から良港として知られていた。
市内の各所には、先史時代の遺跡が残り、海底の埋没林からも土器などが発見され、古くから人々が住みついていたことが証明された。
農業は米作が中心だが、市街地の南にリンゴ園、ナシ園が見られる。リンゴ、ナシとも直売されている。そのほかの特産物として、カノコユリ、ブドウ、タバコなどがある。
魚津市は漁業が盛んで、定着網など各種漁法で、タイ、ブリ、ホタルイカ、アジ、サバなどの漁獲をあげている。漁港は魚津港、経田(きょうでん)港、魚津補助港の3港がある。水産加工も盛んで、かまぼこ、ホタルイカの加工、塩干物などの生産を行っている。
工業は戦前から絹織物の小坂機業、化学肥料の日本カーバイトがあったが、第二次大戦後はファスナー生産の吉田工業、精密機械のスギノマシンなど立地した。近年、豊富な水と労働力を求めて、北陸自動車道のインターチェンジ付近に松下電子が進出した。また、市内の鉄鋼業者が集まって、早月川沿いに機械工業センターをつくった。



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