| (1800〜69) ドイツ協同組合思想の源流の一つとなり,また海外協同組合組織をドイツに紹介した最初の人である。彼は医学を修めたが,しだいに興味の対象が変わり,学者,文筆家として諸大学で近代史,言語学,文学などを講じた。彼は,国家の幸福や不幸は単に政治的な行政形態によるばかりでなく,むしろ財貨が各社会階層にいかに配分されるか,貧者と富者との関係,労働者と労働雇用者との関係によって決まるものであり,労働者が現実に希望のない窮乏化のなかで没落するままに放置されるなら,すべての文化に脅威をもたらす危険がある,と判断した。また,これを救う力のない口先だけの自由主義に深い疑問をもった。この労働問題,社会問題を解決するための重大な手段として,彼は協同組合を規定している。つまり,資本と労働を手中におさめることによって,両者の対立と競争を止揚するものであるが,協同による物質的な力の増大にもまして,組合員の精神的理念的力の高揚が重要である,と説いた。そして協同組合思想とキリスト教精神とは相互に重なり合って作用し,相互に他を強化するものである,とした。彼の協同組合は,主として工業労働者を対象として考えられ,また労働者の困窮の基礎をまず消費者としての不利な面に求めたため,生産協同組合については消極的であった。彼の理想とする協同組合と共同社会は,清潔で健康な労働者団地ともいうべき内地植民計画のなかに,細目にわたって展開されている。彼は実践家としてではなく協同組合思想の伝達者として文筆の面で貢献したが,しかし,当時としては,その思想も比較的理解されることが少なかった。彼が協同組合思想家として見直されたのは,その後のドイツ協同組合運動の発展のなかにおいてであった。主著:Die
Selbsthilfe der arbeitenden Klassen durch Wirtschaftsvereine und innere
Ansiedlung(経済組合と内地植民による労働者階級の自助),Eindruck und Betrachtungen eines
Reisenden(旅行者の印象と観察)。(矢吹 寿) |