| (1772〜1837) フランスの富裕な商人の家に生まれた。天性豊かな批判的精神の持ち主で真実を告げることを恐れなかった。彼は家業や外国旅行などを通じて,商業制度の不正に対して疑念をもち,無政府的自由競争にかわる新しい社会秩序をつくりだす熱望から,社会主義者となった。革命の混乱期に全財産を失い,投獄され,生命の危険にもさらされた。多くの彼の著作は,階級差の増大に腕をこまぬくだけの自由主義,人間的欲望を窒息させようとする道徳家,または不合理な私有財産制や家族制などを批判するとともに,自ら改革案を提示している。彼は,人間の自然的欲望は善であり,これを窒息させ,制肘を加えるような文明は災厄をもたらす,という。しかし,弱者が無慈悲に駆逐される自由競争の経済社会では,欲望は抵抗にあうが,これに対して集団組織,協同組合のなかでは欲望は調和に導かれ,幸福がもたらされる,という。このような観点から,彼は,人間の共同社会にふさわしい新しい生活形態は300から400家族を含む農業の家計的協同体のなかにある,と考えた。この協同体についての彼の空想力の設計によれば,その生活必需品は自ら協同によって自己生産すべきものとし,この共同社会をファランジュと呼び,大家計を営む建物をファランステールと名づけた。ファランステールの内部組織は完全消費協同組合の特徴をもつが,一方,ファランジュは生産協同組合で,土地と生産手段はファランジュの共同財産である。そして,人々は2時間以上同一労働に従事する必要はなく,あらゆる力は調和して労働の生産性は急激に高まる。また,この自治協同体は一国の範囲を超え,全世界を覆うものとされた。しかし,彼の計画は一度も実現されず,この「空想的社会主義の父」は孤独と貧窮のうちに寂しく世を去った。主著:The´orie
des quatre mouvements et des destine´es
ge´ne´rales(四個運動および一般運命の理論),The´orie del’unite´ universelle(宇宙統合論),Le
nouveau monde industriel et
socie´taire(産業的協同体的新世界)。(矢吹 寿) |