| (1880〜1960)帝政ロシアに生まれた。ロシア,ユーゴスラビア,アメリカで教育を受け,コロンビア大学で経済学の学位を得た。経歴は多彩である。初めロシア,ユーゴスラビアの各地の大学で,のちにはアメリカの大学で経済学を講じた。1917〜19年は,革命前のロシアで協同組合加盟組織3万8000を有していたモスクワ人民銀行評議会の有力メンバーであった。地方銀行の頭取となり,ロシア協同組合のロンドン出先期間の理事にも就任した。彼は国家による協同組合支配に強く反対したため,革命政権下では受け入れられなかった。しかし,国家社会主義と資本主義システムの両者を経験したことは,さまざまな経済システムにおける協同組合の役割について,彼に深い洞察力を与えたようである。コロンビア大学の学位論文「協同組合の経済理論」は,資本主義システムにおける協同組合の機能を論じ,これを擁護したもので,今日でも,この分野の研究では最も著名なものの代表としてあげられ,多くの研究者,実務家によって引用されている。1923年の著作『農業協同組合論』は,「協同組合の経済理論」の先駆をなすものであるが,そこでは,@協同組合は複合的な経済単位である,A協同組合の各種形態の基礎的傾向は,利潤排除,出資金の名目的性格,出資額に比例しない議決権,原価提供であるとし,B農協は生産者の組織ではあっても,生産的組織ではなく,C購買,販売の特殊な方法である,と述べている。農協運動の社会的観点では,「経済的に非集中的農業が農村社会集団の経済的活動をその他の産業に於ける高度に集中せる近代的諸条件並に一般近代の競争的経済秩序に適応せしめ得る唯一の方法」(川尻健二訳)と,経済危機克服に果たしつつある農協の役割を評価している。主著:Regularities
in the Geographical Distribution of Agricultural Cooperative
Associations(農協の地域区分),Economic Theory of
Cooperation(協同組合論)。(古桑 実) |